忍者ブログ
武井中心に腐の萌え吐き出しブログ。
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

下僕のよう/葉蓮
自分のファイル整理用に、ちょっと以前に書いた葉蓮再録。

以下、前ブログに上げた下僕葉×蓮。










拍手


逢瀬は廊下で。

誘われた散歩につきあって、不愉快な汗。
郊外に建つ彼の住居からの散歩道は、照る日差しを遮る建物もない。
風も遮られはしないだろうけれど、温んだ空気は熱を持って上昇するだけ。
揺らめくほどの熱空気が体をなぞって、それは拷問に近い散策。
逃げ帰った屋根の下は日差しがないだけでずっと快適。
立ち止まると体の火照りを急に自覚して、顎から汗が滴る。
目に入ろうとした眉の汗を、隣で同じように滴を垂らすお前が指で拭った。
「風呂、入る?」
「ああ。」
着替えを取りに行っただろうお前は足早に家の奥に引っ込んで、勝手知ったるオレは早々に浴室の道をたどる。
古い日本家屋の建物は、家自体が呼吸をして冷房まではいかずとも涼をとれた。
そう急く理由も、急いて余計に汗をかく理由もなく、ノロノロと板張りの廊下の涼を足裏で感じていた。
対して、バタバタと戻ってきたお前はまだ汗も引かない様子で中途半端な伸ばした髪が額に張り付いている。
「お?」
声を、出すのも面倒で。
彼のはえ際に指を差し入れて、べたつく髪を後ろに流す。
流れる汗も乱暴に親指の付け根で拭って、それをなすりつける訳ではないけれど髪を梳く。
黒髪は熱を持って、汗でべたついて、指に絡む。
「…どした?」
お前が顔を近づけてこようとしたから、それから逃れるように半歩下がる。
そう幅のあるわけでもない廊下で、すぐに背はざらついた壁にぶつかる。
お前はオレの両脇に手をついて、本気で逃れようとしたわけでもないから構わないのだけれど、オレの額にお前のそれを合わせる。
声を出すのも、億劫で。
頭の角度を変えて唇を合わせれば、お前は拒否をするでもない。
皮膚の表面はかいた汗が日陰で冷えて、一瞬の涼。
深く合わせた口内は、お前の体内。
熱を持って、絡む。
息を切らすほどの運動をしたわけでもない、犬のようにそれでしか熱を発散できない訳でもない、それでも離した口を開けて呼吸した。
だらしがないと、叱る人はいない。
お前も同じように、赤い体内を曝したまま。
「…風呂、入ってからにする?」
「…出てから、考える。」
とりあえず、腰に回った腕は暑苦しくて払いのけた。
首筋から背中に流れた汗は不快で、べたついた肌を重ねる気にはなれない。
「じゃぁ気が変わらないように今のほうがいいんかな?」
拒否を言葉にしても、きっと目の前の男は何だかんだと食い下がってくるのが目に見えて、溜息と押しのけて浴室に進む脚で返答した。

重みのある服を脱ぎ捨てて乱暴に籠に放り込んで、水に近いシャワーを被る。
「いきなり冷やしたら駄目なんよー」
次いで入ってきたお前が後ろから温度をいじって、椅子に座るよう促される。
オレの背後で膝立ちになって、掌で泡たてたシャンプーでオレの髪を洗うに任せる。
自動洗髪機だと思えばいい、楽でいい。
が、石鹸を同じように掌で泡たてたのは頭を小突いて止めさせた。
「気色悪いことをするな、」
風俗の真似事でもする気か、と叱ってやれば、叱られるのは想定内だったようで横で大人しく自分を洗い始めた。
一足先に体も洗い終わって、湯船に入る。
半露天の作りで外気温は変わらないはずだが、熱い湯につかれば空気は冷たく感じた。
広い浴槽の、わざわざオレの隣に入ってきたお前に眉をしかめて、火照った体を淵の岩の上にあげて膝から下だけを湯に入れる。
逃げられた、という顔をしているお前に、行儀が悪いが足をばたつかせて波をよせる。
「酷いんよー」
それを止めよう、と、する体裁で、オレの足に腕を絡める。
振りほどこう、と、する体裁で、足を揺らめかせてみたが拘束が緩むでもない。
日陰から日向にたゆたう空気は緩やかな風、一度濡れた体には心地よかった。
お前はリラックスした振りをしてオレの膝に顎を預けてくつろぐ。
そろそろ叱ろうかと思ったが、手で湯をすくってはオレにかけ始めたのでその働きを評価して少し好きにさせてやる。
「湯冷めするんよ。」
「これだけ暑ければ平気だ。」
「夏風邪でもひいたら大変なんよ。」
湯をかけていた手が、オレをなぞって、手を取られて、ひかれる。
引かれるまま浴槽の中、お前の傍に落ちつけば当然のように寄ってきた唇。
重ねるだけのそれの後に、問う。
「ひいたところで、お前が看病してくれるだろう。」
当然、と、返事をまた行動で取ろうとしたお前の顎を掴んでそれは拒否する。

風呂上がりの夕涼み、畳みの感触が心地よくてゴロゴロとしていればいつのまにか夕食時。
隣で同じようにまどろんでいたお前は、気付けば台所へと立っていて二人分の夕食を持って戻ってきた。
それを拒否する理由もなく、二人で狭いちゃぶ台を囲んで。
食後の倦怠感にかまけてすっかり帰路のタイミングを逃した。
冷房の無い居間で怠けているうちに、昼過ぎに浴びた湯の心地よさはとうに消えて。
外を歩いていたよりかは幾分かましなべた付きが気になるなと、思うと同時にお前が風呂の準備に消える。
昼過ぎよりもだらだらと入った温泉で温もった体に、オレの着付けをした後バタバタと台所に戻ったお前が持ってきた氷菓。
お前の部屋に上がって、窓辺で涼みながらそれを食す。
食事の準備の前か、風呂の前か、その後なのか、お前の部屋にはすでに布団が敷かれて後は寝るだけで、明かりもつけない。
周りに住居もなく、目隠し代わりの障子も開け放たれている。
自然光にも目が慣れれば不自由はない。
現に、目の前でにやつく男の顔を見るのに支障がない。
「ん?」
オレの目線に気付いてか、首をかしげる。
眠気と湯上りのけだるさにかまけて、オレはまた返事もしない。
食べ後の氷菓の包みをそちらにやれば、お前は小間使い扱いに不満も漏らさない。
「まだ食べるか?」
「いらん」
ひらひらと手を振れば、そのゴミを放置するでもなくそそくさと屑入れに捨てに行く。
振りを、したのかもしれない。
否、それが本用で後動が思いつきやついでに過ぎないのかもしれない。
オレには分からない。
でも、お前は酷く楽しそうな顔をしているように見える。
「このまま寝ちまうか?」
何が楽しいのか、オレの顔を覗きこんでオレの手を取る。
けだるさから半分閉じた目を、眠気と取ったのか、それとも。
「あぁ、そうする。」
手を引かれるまま、布団の上へ。
薄い綿毛布はお前の手で半捲されていて、さらさらとしたシーツの上にオレは腰を下ろす。
「枕、つかう?」
答えの分かった問い、否、答えの用意された問い。
天邪鬼に、意地悪に、別の答えを言ってやろうと思いつきはしたが、それも面倒で。
「いらん。」
「ん。」
お前は枕を引き寄せて、先に横になって伸ばした腕にオレを誘う。
「…お?」
転がったオレに、お前は意外そうな声。
背を向けたお前に見えないと知っていて、浮かんだ笑みを隠しもしない。
「れーん?」
片手はオレの頭の下。
お前はオレの背にくっつくように寄ってきて、ご機嫌をうかがうように肩に手を。
「冷めた。」
オレはその手を、腰を抱かせるように誘導して。
「腹が冷えた。」
オレの訴えに、お前は嬉々として腰を抱き寄せて首筋に顔を寄せる。
「背は寒くないぞ。」
ぴったりとくっつくお前に、文句の口調で訴える。
「いんや、オイラがくっついてないと駄目なんよ。」
「何がだ?」
「オイラが、駄目なんよ。」
しばらく背後でごそごそとしていたが、暑い夜にくっつくだけでは不快で。
「れーん、」
「何だ。」
「こっち向かん?」
律儀に、片手を枕に、片手でオレの腹を温めて。
くるぶしまで覆う和風寝巻のせいで足は自由でない。
自分発信のアプローチに限界が来ての交渉のようだったが、それ譲歩する理由もない。
「却下、寝る。」
「うぇえ!?」
「煩い。」
安眠できる体制を探して、よく知ったお前の腕の中でそんなものはすぐに見つかる。
少し身をよじっただけなのに、慣れない寝巻はすぐに肌蹴る。
あぁ、そうか。
だって寝巻を着て朝を迎えることの方が少ない。
背後で情けない呻き声をあげ続けるその原因を作る男に、意地悪をした後に少しだけ飴を。
「起きたら、考える。」
少しだけ。
風呂前に一度使った罠でも、罠と知りながらもお前は足を突っ込む。
「…おやすみ、蓮」
「おやすみ」
明らかに落胆したお前に、またほくそ笑んで。
もう少しだけ、飴を。
肌蹴た浴衣から足を出して、背後のお前の足に絡める。
元より密着した体制で、それを払うお前ではないと知っている。
じゃれているうちにお前の素足にすり寄るに成功して。

この飴は、お前にとっては毒か薬(ドラッグ)入り。

「おやすみ、葉。」
釘をさして、オレは安眠におちる。
PR
COMMENT
Name:
Title:
URL:
Message:
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Pass:

| prev | top | next |
| 36 | 35 | 34 | 33 | 32 | 31 | 30 | 29 | 28 | 27 | 26 |
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
プロフィール
HN:
ムム
性別:
女性
自己紹介:
関西在住マンキン蓮受け同人者。オフもたまにでます。
@mumu_x0
バーコード
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ  [PR]
  /  Design by Lenny